コリン・デクスター。ジェリコ街の女 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

モース巡査部長とモース主任警部

 

コリン・デクスター原作のドラマ『主任警部モース(1987)』シーズン1は、以下の作品を元に映像化され現在 Amazon Prime で視聴できる。せっかくなので、ドラマと並行して原作『ジェリコ街の女』『死者たちの礼拝』を再読してみた。

 

 1話.ジェリコ街の女

 2話.ニコラス・クインの静かな世界
 ⒊話.死者たちの礼拝

 

以前から原作と映像化作品の比較に興味がある。どちらが良い悪いではなく、文字と映像では描かれるべき表現世界は違う。文字が伝えるモノローグと視覚映像から伝わるものが違うのだ。実体験や読書体験などを総動員して自分で想像する世界と、他者によって描かれる実映像が同じはずがない。

 

コリン・デクスター:ジェリコ街の女(1981)創元推理文庫

 

『ジェリコ街の女』のドラマと原作では結末(犯人)が違っている。作者はモースを描きたいばかりに原作を(過剰に)複雑にするのだが、そのまま映像化すると展開を追いかけるに忙しくなりすぎる。ドラマではそこそこシンプルに映像で余情(モノローグ)を語らせることにあるのではないか。

 

モース警部はあるパーティで出会ったアン・スコットといい感じになり再会を約すが、数ヶ月後に彼女は自宅で首吊り自殺を遂げる。本当に自殺なのか? ギリシャ悲劇、ソフォクレスの『オイディプス王』を彷彿する展開をみせるが、終盤になるとモースの推理は次々と破綻していくのだった。