水島爾保布。新東京繁盛記 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

水島爾保布:新東京繁盛記(1924)日本評論社

 

新東京繁盛記 表紙・表紙裏

 

水島爾保布(1884-1958)は、大正昭和の戦前に活躍したコラムニスト(紀行・慢文・他)の位置ずけになるのだろうが、絵師として挿絵・装釘などでも活躍、マス・メディア勃興期の立役者のひとりといえる。その水島爾保布は今年、生誕140年にあたり、気のせいか爾保布におう関連の記事が目立つような気する。

 

発禁になった『新東京繁盛記』の「愚漫大人見聞記」が前田恭二『関東大震災と流言(2023)岩波ブックレット』で復元され、同氏による『文画双絶 畸人水島爾保布の生涯(2024)白水社』の発刊、岩波のPR誌『図書』1月号から(全4回の予定で)不定期連載も始まった。

 

われらが新潟県長岡市は爾保布隠棲の地で、地元新潟県立近代美術館の研究紀要では桐原浩氏による研究ノートが断続的に掲載されている。

 

新東京繁盛記 木版口絵

 

地元では、まだ爾保布の晩年を知るひとがいて、知人が訪ね歩いては聞き取りをされている。その知人が『新東京繁盛記』をみたいというので久しぶりにご紹介。残念ながら表紙には赤字で「発売禁止改訂版」であるごとく問題の稿は削除されている。

 

爾保布の文体は“啖呵の缶詰”と称される。「地震によって新吉原遊郭が壊滅したことも手伝って廃娼運動が起こったが、廃止はやぶさかではないが、ああして軒並みバラック遊郭が繁盛しているじゃねえか。だいたい、神と和合した古事記の時代以降の風俗だろう」といった鉄火文体である。

 

新東京繁盛記 扉

 

 

新東京繁盛記 中扉

 

水島爾保布 関連書籍から

 

  水島爾保布:新東京繁盛記(1924)日本評論社

  水島爾保布:痴語(1924)金尾文淵堂

  谷崎潤一郎:AとBの話(1921)新潮社/爾保布 装釘

  吉井勇:歌集 鸚鵡石(1918)玄文社/爾保布 挿絵