国木田独歩。縮刷独歩叢書 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

国木田彩良

 

国木田彩良はロンドン生まれでパリ育ち。父はイタリア人でハーフながら、自身のルーツである日本でモデルデビューしたいと来日。彼女は独歩の玄孫とのことです。 

 

国木田独歩は明治の自然主義の開鑿者として知られるが、意外と出版&編集者としての経歴は見逃されている。知らぬ人とていない『婦人画報』の創刊時の編集長は独歩。後に金に困って売却されたものの今日まで続く日本最古の女性誌として知られ、黒岩比佐子『編集者国木田独歩(2007)角川選書』に詳しい。

 

縮刷独歩叢書(1917-20)新潮社

 

さて、大正6年から9年にかけて全9巻発刊された『縮刷独歩叢書』は文庫版サイズのしゃれた天金布装釘で手触りもいい。ちょっと、ドイツのインゼル文庫を彷彿する表紙で所有欲をそそる。比較的古書価が安く、手元にあるものはいずれも文庫本の価格で購入した。『縮刷独歩叢書』については、惜しむらくも急逝された黒岩比佐子さんのサイト『古書の森日記』を参照されたし。

 

今回は、最後に刊行された『詩及小品集』を入手したが、独歩の詩に関しては感心しなかった。ただ、栞代わりに大正12年発行の二等寝台車の切符の半券が挟まれていて、最初の持主はこの本片手に夜行列車に乗り込んだのだろうか。